旅行記2018 大阪・香川・広島・島根編

9月17日、新幹線で静岡から大阪へ向かう。車内でチャンドラーの『ロング・グッドバイ』を読むが、いまひとつ良さがわからない。新大阪のホームにはハローキティの柄の新幹線が停まっていて、サラリーマン風のおじさんが写真を撮っていた。

 

いったんホテルにチェックインしてから、大阪城の野外音楽堂でハンバートハンバートのライブを観る。演奏は素晴らしかったのだが、客層がカップルや夫婦、学生グループなどが多く、少し肩身の狭い思いをする。

 

大阪には観光目的ではなく中継地として訪れた。本当はもう少し中心地も見て回りたかったが、時間の余裕もなく、疲れていたので諦める。大阪城からの帰り道にマクドナルドをテイクアウトしてホテルで食べる。

 

翌朝。9月18日。大阪から新幹線で岡山を経由して香川県丸亀市に向かう。丸亀はすごく静かな街で、ひとつひとつの音が遠くからはっきりと響いてくるような感じだった。午後に到着したのだが、このあたりのうどん屋さんはお昼しか営業していないところがほとんどのようで、数少ない夜営業しているお店の開店を待つ。

 

市街を散歩してみる。明らかにコンビニよりうどん屋のほうが多い。夜営業のうどん屋に入ると、気さくな店主にいろいろ話しかけられる。「香川ではうどんが主食」というのは誇張でもなんでもなく単なる事実らしい。なんでも雨が少なく日照りの強い気候が小麦をつくるのに適しているようだ(その代わりに米はまずいらしい)。ほかにも地元の人はこうやって食べる、とかこの食べ方は観光客しかしない、とか、頼んだもの以外にも試食させてもらったり、うどんについて色々レクチャーしてもらう。

初めて食べた香川のうどんはたしかに衝撃的だった。いままで食べたことのあるうどんとは明らかに別の食べ物だった。すごい。うどんという食べ物ひとつで、ちょっとしたカルチャーショックを受ける。

 

翌日。9月19日。別のうどん屋を2軒ほどハシゴして、丸亀城の周囲をぐるりと散歩する。お堀の池には真っ白なアヒルと真っ黒なアヒルが一羽ずついた。

 

広島へ向かう。すごい都会だ。広島市街はとにかくチャリ率(と可愛い女の子率)が高く、しかもみんなけっこうなスピードを平気でビュンビュン飛ばしていて、歩行者としては少し怖い。

せっかくなので平和記念公園原爆ドーム)のあたりを散策する。狭い歩道を歩いていたら修学旅行生と思われる生徒達の群れに巻き込まれ、少し気まずい。

そのままお好み焼き屋「大福」に入る。ひどく年季の入った店構えで、寡黙な店主が野球中継を観ながらお好み焼きを作ってくれる。いつもはそんなに飲まないのだが、ビールを3杯も飲んでしまう。

この日は誕生日だった。少し気分が塞いでいた。基本的に誕生日というのは好きではない。お好み焼きとビールで気分をリセットする。

 

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9月20日。朝に出る高速バスで山を越え、島根県出雲市に到着する。適当に時間をつぶしてから電車に乗り、最終目的地である温泉津(ゆのつ)市に向かう。温泉津は名前のとおり温泉街で、レトロな街並みが今も残っている。無人駅を降りて旅館まで少し歩く。子どもがひとりもいない。地図を見るとこの市には小学校がないようだ。

 

浅原才市の生家の前を通る。才市は浄土真宗妙好人として鈴木大拙が紹介したことで知られる。大学生のときに受けた講義のなかで浅原才市と温泉津の町の存在を知り、その才市の為人と町の景観に惹かれるものを感じ、温泉津には一度行ってみたいと思っていた。

 

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旅館「のがわや」は感じの良いところで、共同の温泉のほかに貸切の温泉にも入ることができる。温泉を出てひと休みする。夕食が運ばれてくる。

 

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ここで食べた「のどぐろの煮付け」は人生でベストと言えるほどの圧倒的な美味さだった。食べ物の美味さで涙が出たのは後にも先にもこれが初めてだった。絶句する。言葉を失う。頭を抱える。それほど美味かった。暴力的なまでの美味さだった。量が多くて完食に2時間かかった。

 

9月21日。温泉津で2泊していく予定だが、特にやることもない。不安定な天気だったがすこし晴れ間が見えたため街を散歩する。9月の下旬だがまだ蝉が威勢よく鳴いている。才市の像を見にいく。レトロな街はなんだか異世界のように、透明な膜で覆われたように非現実的な感触だった。子どもの頃の実在しない記憶が目の前にあるようだった。

 

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旅館に戻り、ぐだぐだと時間を潰す。隔絶された異世界YouTubeを観る。何もやる気が起きない。

 

9月22日。朝風呂に入り、朝飯をたらふく食う(食後にコーヒーが出てくるのが嬉しい)。旅館を発ち、主人に駅まで乗せてもらう。無人駅で切符の買い方がわからず人に尋ねる。そもそも切符は売っていないらしい。後払いのバスのように、車内に乗車駅からの運賃が表示され、降りてから払うようだった。

 

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出雲駅から出雲空港までのバスに乗る。空港でお土産を物色する。鳥取に近いからか、ゲゲゲの鬼太郎のグッズも売っている。家族と知人たちにお土産を買い込む。このとき買った「因幡の白うさぎ」「白ウサギフィナンシェ」というお菓子がすごく美味かった。

 

飛行機で静岡に帰る。5泊6日。いい旅行だった。静岡は雨だった。